ここは、ちょっとかわった生き物たちが住む世界"リヴリーアイランド"。 永い時を経て人のように進化し、変わった能力も持っている。 その能力で戦うこともでき、それぞれに属性やスタイルというものがある。 これはそんな世界の、ある2匹の物語。 トントントン。 カチャカチャ。 ジュワァッ。 静かな家の中に、キッチンで調理する音だけが響く。 その軽快なリズムが作っている人の料理の上手さを物語っている。料理を作っていたのは、茶助だった。 茶助は朝食を皿に盛りながら、2階でまだ寝ているトビにむけて声をあげる。 「トビ兄!ご飯出来たよぉ!」 ・・・・。返事がない。 「トビにい!?」 ・・・・。 「もぉ・・・」 茶助は仕方なく階段を上り、トビの部屋のドアをノックする。 「トビ兄?入るよぉ」 ドアを開けると、窓から清々しいくらいの陽の光が真っ直ぐ目に入ってくる。 そしてその窓のすぐ下に、ひとつのベッドが横向きに置いてあった。 ベッドの上の布団が山のように盛り上がっていて、その右端からくせっ毛の黒髪とモフモフした耳が少し見える。 「トビ兄〜、朝だよぉ〜」 茶助が、かかってる布団ごとトビをゆする。 「ん〜・・・」 しかし、トビは一向に起きる気配がない。 「トビっ、兄っ!」 茶助は1、2と言わんばかりの掛け声のような呼び方をしながらトビから布団をはがした。 「・・・」 布団をはがされたトビから、殺気が溢れ出す。 「ほらほら、ご飯出来たよ」 「・・・」 茶助が1階に戻るため部屋のドアを開けようとしたとき、トビはゆっくりと体を起こした。 そして深く息を吸い、呪文を唱える。 「ブラスト!!」 その途端、雷のような爆発が起こる。 「ディフェンド!」 茶助にはお見通しだった、というかいつものことなので、瞬時に呪文を唱えなんなくかわす。 トビも別に茶助に危害を加えようと思っているわけではなく、ただ気分をスッキリさせようとしただけなので、 今の一撃で満足のようだ。 大きな欠伸をひとつして、わしゃわしゃと髪をかく。すでに殺気は消え、まるでごく普通に起きたかのようだった。 「もう、ぼく毎朝命がけなんですけどぉ」 「死んだことねぇじゃん」 「当たり前でしょ!」 喋りながら2匹は階段を下り、朝食をとる。 朝食が終わると茶助が皿を洗い、トビはシャワーを浴びる。5分という早さで出てきたトビはドライヤーで 髪を乾かし、リビングでくつろぐ。 ソファに深く座り込んでまったりしていたトビが思い出したかのように茶助に聞いた。 「そぉいやぁ、今日なんかあったっけ?」 「アヤメさんと桔梗さんが来るけど?」 「うえっ、マジでぇ?」 さらりと普通に答えた茶助に対して、トビは嫌そうな反応を見せた。 トビはフードを深くかぶり、玄関へ向かう。 「ちょっと散歩行ってくるわ」 「え、そろそろ来るよ?」 「お前だけいりゃ充分だろ」 引き止めようとする茶助を構いもせず、玄関のドアを開けた。 「あら、あなたが出迎えてくれるなんて珍しいわね」 開けた先に立っていたのは、桔梗だった。後ろにはアヤメもいた。 「トビ〜!おはよっ♪」 アヤメと桔梗は姉妹であり、お屋敷の娘である。妹のアヤメはトビに気があるらしく、よく絡んでくるが トビはそれが面倒くさいらしい。姉の桔梗はトビより少し年上で、茶助やアヤメよりもトビとの付き合いが長いが、 礼儀のないトビを桔梗はあまりよく思っていないし、トビも礼儀にうるさい桔梗をあまりよく思っていない。 「はぁ・・・」 トビは深いため息をついた。 「お客を前にしてため息なんて、礼儀がなってないわよ」 「野蛮人ですからw」 トビは口だけ笑ってみせる。 2匹の間に嫌な空気が流れる。 その空気を断ち切ったのは、茶助だった。 「あ、桔梗さん、アヤメさん。いらっしゃい」 茶助が玄関に走ってくる。 「早かったですね」 「アヤメがはやくってせかすから、七瀬が送ってくれたのよ」 七瀬とは、桔梗専属の使用人である。 「そうそう、ウチに新茶が入ったから、茶助に持ってきてあげたわ」 新茶の入った袋を茶助に渡す。 「わぁ!ありがとうございますw」 桔梗は小さい頃から華道や茶道の教育を受け、桔梗自身それらが好きなので、お茶や和が好きな茶助と仲がいい。 事実、今日も茶助と約束をし、茶助に会いに来たのだ。だから桔梗としてはトビがいなくても構わない。 むしろトビがいない方が楽しいかもしれないとさえ思っている。 「どうぞあがってください。さっそくお茶淹れますね♪」 茶助の言葉で、桔梗が中へ入っていく。 「アヤメさんもどうぞ。ほら、トビ兄も」 「はぁ〜」 トビはまた深いため息をして中に入る。 アヤメもトビについて行くように中へ入っていった。 次へ 戻る